不動産事情
情報提供:NPO法人あまみ空き家ラボ
何度も島を訪れて家を探しているのに見つからない
集落の中をちょっと歩いてみると、たくさんの空き家があります。でも、「インターネットで探しても 見つからない」、「不動産会社を回っても希望の家がない」、「役場に聞いても空き家はないと言われた」など、 家探しで苦労している人は多いです。
空き家はたくさんあるのに、貸してくれる家が少ないのはどうしてでしょう?
実は、人口は減っているのに、世帯数はそれほど減少していません。つまり、大家族から核家族の世帯に今も移行中で、島民も家探しをしています。「家を貸すなら知った顔」と考える大家さんが多く、条件のよい物件は口コミで知り合いに決まって
しまうことが多いのです。
不動産会社
奄美群島の島々には約80社の不動産会社がありますが、7割近くが奄美大島の奄美市名瀬に集中しています。他の島にも不動産会社はありますが、数は少ないです。 各島の不動産会社は、不動産物件情報を参照ください。
売買の仲介物件は、島の田舎でも見られるようになりました。ただ、取引数が少なく、相場よりも高めであったり、原野では水道も電気も来ていなかったりすることがあります。
仲介賃貸物件の特徴
不動産会社の仲介物件は、島の中心部
奄美の島々には、県職員、学校、医療関係者など、多くの人々が赴任してくるため、不動産会社も転勤者をメインに営業しています。赴任先が市街地であったり、島での利便性を追求する転勤者も多いので、賃貸物件も市街地に集中します。
新築物件相場は本土並
各島ともに供給量不足な上に、建築資材の高騰などにより家賃は上昇しています。特に、奄美大島では奄美空港から名瀬に向かう国道沿いや名瀬市街地で、マンションや戸建の賃貸物件の新築ラッシュとなっています。 新築物件の家賃は8~10万円超、古民家とは言い難い老朽物件でも1~3万円と本土とあまり変わりません。
設備・仕様は古過ぎるのに、家賃は高い
水回りや内装をリフォームした物件も増えてはいますが、本土では見かけることが少ない「バランス釜」の浴室や水洗トイレだけど「和式」などの昭和を感じる物件は少なくありません。 老朽物件でも借り手があるため、“昭和”物件はまだまだ健在です。しかも、“昭和”物件でも人気エリアでは家賃5万円前後と、本土より割高感があります。
ファミリータイプが中心
築年数が古いせいかもしれませんが、2K~3LDKの昭和スタイル物件が主流です。戸建てになると、さらに部屋数が増えます。
駐車場がない
古い町並みの市街地や集落の中心部は家が密集し、道幅が狭いです。敷地内に駐車スペースがない家も多く、別途、駐車場を借りることが多いです。 相場は奄美大島の中心部で5,000円~10,000円/月、郊外でも3,000円程度となっています。
「ペット可」が見当たらない
室内でペットを飼うことを嫌う大家さんが多く、仲介賃貸物件の1割程度しか「ペットOK」物件はありません。
物件によっては島内保証人が求められたり、退去の際に畳替えを求められたりすることもあります。
各島の不動産事情
奄美大島・加計呂麻島
不動産会社が取り扱っている賃貸物件は、中心市街地に集中しています。 奄美大島北部エリアや瀬戸内町古仁屋周辺は、需要の高まりから、ここ数年家賃相場が1~2万円ほど上がり、不動産仲介物件も増えています。 加計呂麻島には仲介賃貸物件はありません。
喜界島
不動産会社が1社しかなく流通物件が皆無に近いです。中心部にアパート、マンションがあり、家賃は4万円台から6万円台です。
徳之島
不動産会社が島全体の流通物件を取り扱っています。中心部のアパート、マンション、戸建ての家賃は4万円台から 6万円台が主流です。中心部を離れると、家の状態が良い割に低家賃の物件が多く、ほかの島に比べると選択肢があるのが特徴です。
沖永良部島
不動産会社が島全体の流通物件を取り扱っています。中心部のアパート、マンション、戸建ての家賃は4~6万円台が主流です。 住民も家を探していて、新築アパートも建設中に満員御礼になるようです。
与論島
不動産会社が2社ありますが、取り扱い物件はほとんどありません。大型台風で倒壊した家屋も多く、住民も家が足りない状況で、奄美群島随一の住宅困窮地と言えます。
自治体の住宅
公営住宅
どこの自治体にもある市町村営の住宅です。所得制限の内容や単身世帯は不可などの入居条件は、市町村によって異なります。 住民票移動が前提で、契約から入居までの期間は2カ月など入居条件がある自治体も多いです。 一軒家よりも集合住宅タイプが多いです。家賃が安く設備が整っている公営住宅は、在住者にも人気が高く、 競争率は高いです。
定住促進住宅
原則、移住者向けの公的住宅※で、空き家となった民家を市町村が借り受け/買い上げて改修した後に移住者に貸し出したり、
新築を貸し出したりする場合もあります。地域に定住し、地域行事への参加や地域の伝統・特色を生かした地域コミュニティの活性化に貢献する
「地域活性化の担い手」になることが求められます。入居条件、賃貸期間や家賃は、市町村によって異なります。
※移住者だけでなく、地域住民も入居対象者としている自治体もあります。
空き家バンク
空き家を貸したい人と借りたい人のマッチングを支援する制度です。
ただし、自治体の関与は物件紹介までが一般的で、 家主と借主の直接取引となることが多いです。
契約書は契約者同士が話し合って作成する必要があり、面倒くさいからといって契約書を交わさないと、
家主・借主の責任が不明確で入居後に トラブルが発生することがあります。
【 空き家バンクがある自治体 】
奄美大島:奄美市、瀬戸内町、龍郷町、宇検村
喜界島:喜界町
徳之島:徳之島町、天城町、伊仙町
沖永良部島:和泊町、知名町
与論島:与論町
移住体験住宅
最短3泊から1年間などの長期間、住民票の移動なしでお試し暮らしのできる自治体運営の滞在型施設です。
家具、家電も揃っているので、手ぶらで暮らし始めることができます。
【 移住体験住宅がある自治体 】
奄美大島:瀬戸内町
喜界島:喜界町
沖永良部島:和泊町
直接取引の常識
家賃の低い物件は不動産会社としては手数料も低いため、手を出したがりません。市街地から遠 くなるにしたがって、新築・築浅物件以外は流通に乗りにくくなります。そのため、多くの人が大家さんから直接、家を借りています。
古い物件が当たり前。空き家歴数十年のツワモノ物件多し
人が住んでいる物件は、その人が退出しても、すぐに次の借り手が決まり、流通に乗ることは極めて稀です。
口コミネットワークにいない島外の人が借りようとすると、どうしても長年空き家になっていた物件になります。
トイレが汲み取りであったり、雨漏りがしていたり、給湯器が壊れていたり、荷物が満載のままだったりと、
「この家に住めるんだろうか?」状態が多いですが、全部自分で修理・リフォームする人たちもいます。
下水・通信等のインフラ事情は、奄美群島の暮らし > 通信・インフラをご覧ください。
地元の人が大家さんと借主を仲介
「空き家はないですか?」と集落内を探す人もいますが、大家さんが知らない人に貸すことは稀です。大家さんの知り合いにお願いして、大家さんを紹介してもらうことが多いです。
契約書なし、口約束が多い
契約書がないのが当たり前ですが、これがトラブルの原因になります。契約期間や修繕責任が明確でなく、 都会のルールが通用しないことも多々あります。借りる前に大家さんとよく話し合い、簡単な書面でも構わないので、合意事項の文章を双方で保管しておくと安心です。
昔ながらの奄美の家は、築100 年を超えるものも珍しくなく、台風などの自然脅威と亜熱帯の高温多湿の気候の中で生きて きた先人たちの暮らしの知恵が詰まっています。
基礎のない家(束石基礎)
台風などの強い風圧から家を守るために、基礎を固定せずに束石の上に家を乗せているだけの造りです。風圧で家が束からずれてしまっても、元に戻せます。
シロアリに強い木材
外壁は杉板で、湿度に弱い塗装をしない防腐剤のみの仕上げになっています。柱や梁はイジュと呼ばれる奄美群島自生のツバキ科の木材など、大変固い木材を使っています。
別棟造り
増改築で別棟を繋げて一軒の家に見える家が多いですが、オリジナルの様式は、母屋、台所、風呂場、トイレなどが別棟になっています。家の中に雨どいがあったり、バリアフリーからは程遠い段差があったりします。
防風林が家を守る
家を囲むようにして植わっている木々は防風林で、台風や冬の季節風などの強風から家を守っています。見晴らしを良くしようとして防風林を伐採すると、 直ぐに家が壊れてしまうこともあります。
屋根はトタンで背が低い
台風などの強風対策は防風林だけではありません。強風から家を守るために、低い屋根になっています。トタンを使うのは、台風で屋根が飛んでしまっても、軽くて安い素材で修復しやすいからです。トタン屋根の家の多くが断熱材を入れていません。夏は暑く、雨が降るとテレビの音が聞こえなくなるくらい雨音が響きます。
夏は涼しく、冬は寒い
亜熱帯の島々の家は、断熱材なし隙間だらけの家が多く、風通しは良い家が多いです。 夏の気温は32~33℃程度と都会よりも涼しく、日差しが遮られている状態であれば、風が吹けば涼しく感じます。 逆に、冬の気温は10~15℃程度と暖かいと言われていますが、外気と同じ状態でずっといるのと変わらないため、 かなり寒く感じます。隙間があるので、室内を仕切って空気を温めようとしても暖房の効きは悪いです。
家探しのワンポイントアドバイス
不動産仲介物件が少なく直接取引が主流と聞くと怯んでしまいそうですが、多くの移住者が家を見つけています。
地元に知り合いを作ろう
知った顔から家探しを相談されると、探してあげようという気持ちになります。まずは希望の土地で顔と名前を憶えてもらいましょう。知り合いができると、思わぬところから思わぬ情報が飛び込んできます。
自治体に相談してみよう
流通物件の少ない地域を中心に空き家を紹介、定住促進住宅を用意している自治体があります。
住みたい島の自治体のホームページなどをチェックしましょう。
常に物件があるわけではなく、こまめなチェックが大切です。 定住促進住宅は募集期間が決まっている場合も多いので、やはり事前に調べておきましょう
【 オンライン相談を実施している自治体 】
■奄美大島■
奄美市
龍郷町
■徳之島■
天城町
あまみ空き家ラボに相談してみよう
空き家はたくさんあるのに流通物件が少ない奄美群島の空き家活用に向けて活動中のNPO法人です。 「オンライン30分無料相談」や、大家さんから一旦NPOが借り受けて貸主に提供する「サブリース」事業、 集落暮らしを体験できる「滞在ハウス」事業などを手掛けています。家探しに疲れる前に、一度相談してみましょう。
最初の家は仮住まいと割り切ろう
口コミネットワークはインターネットより早いと言われる島では、住んでいないと入ってこない情報がたくさんあります。 島外から希望の土地での家探しをしていては、「いつまでたっても家が見つからない」状態から脱せないことが多いです。 最初の家は理想を追求せず、許せる範囲で妥協することが、理想の住まいとの出会いを作ったりします。
仮住まい住宅を用意している自治体もありますし、集落にどっぷりつかることのできる滞在ハウスも増えてきました。一度、ロングスティ用の滞在ハウスをチェックしてみましょう。
大和村役場の移住担当者が教えてくれました
不動産会社が1軒もない大和村の不動産取引は、原則、直接取引。 大家さんと知り合いになれるかどうかで、
希望の家に住めるかどうかが決まります。 住んでいれば、必ず人伝えにつながりが広がるので、
まずは村営住宅に入居してしまうのがお勧めです。
集落ごとに雰囲気が異なります。集落での暮らしを感じるには、村内の宿泊施設を利用するのがお勧めです。